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高知新聞連載 (地球・美の幻風景) ~光の道~ 純白の煌めきの中で 

     1月22日・高知新聞朝刊 水曜ミュージアム

    地球・美の幻風景  桐野伴秋の世界

 

 
Photo


              ~光の道~  純白の煌きの中で

  空一面もたれかかったような雲に、
  翌日の雪を予想して、高知県西部へ、
  まだ暗いうちから車を走らせた。
  四万十川へ向かうこの道は魅力的な風景に
  彩られている。
  私は窓の外の景色を惜しみ、
  見送りながらアクセルを踏んだ。
  土佐佐賀のトンネルを抜けると、
  左側にいっきに海が開けて来る。
  とても気持ちのいいドライブコースだ。
  夜が白み始め、白浜海岸には
  積雪の様子がぼんやりと見え出した。
  寒さに震えながらも私は一度車を止め、
  いそいそとカメラと三脚を持ち出した。
  まだ、だれの足跡もついていない、雪の上をそっと歩く。
  靴の下できゅっきゅっと雪がきしみ、
  予想以上の大きな足跡がついた。
  申し訳ない気持ちと、面白さが混じり、
  どんどんと浜へ向かって進んでは、
  そっと振り返って
  自分の付けた足跡を確かめてみた。
  そんな遊び心を楽しみながら、
  浜へ下り、私は歓声を挙げた。
  水と砂が描き上げた、美しい曲線が海に続き、
  水晶を集めたような純白の雪の上を
  冷たい空気が撫でるように流れていく。
   砂浜に立ちシャッターを押す私の前を
 
   ゆっくりと時間が流れ、夜が明けてゆく。
   静まり返った情景の中、
   まるで、一体の像のように
   私の姿は映るかもしれない。
   太陽は雲間に隠れていたが、
  ―瞬光のシャワーを浴びて、
  朝の世界は輝きを増した。
  大きくタクトを振られ、一日のはじまりが、
  今、放たれようとしている瞬間だ。
  どこに隠れていたのか、
  小鳥達が一斉に
  ざわめき始めた。
 光から風へ、風から波へ伝えられた、
 生命の連動を感じながら、
 水平線から寄せられる、
 波の言葉だけに耳を傾けた。
  撮影を終えると、
 感覚を忘れるほど冷たかった足先に
 やっと意識が届き、そっと足踏みをしてみた。
 かじかんだ手にも息を吹きかけ、
 指を一本ずつほどき、
 ほっと手のひらを見る。
 いつの間にか日は随分と高く昇り、
 銀盤は眩しいくらいに煌めいている。
  自分の白い息に包まれながら
 海岸を歩くと、少年の頃、初雪を見て、
 はしゃいでいるもう一人の自分の姿を
 そこに見出した。
  何もかもが新鮮だったあの頃・・・。
 忘れかけていた何かが、
 もう一度呼び戻されたひと時だった。
 嬉しくて、寂しくて、涙がこぼれる。
 どうやら私の中に閉じ込められていた
 遠い感情が解かれていったようだ。
  人は、いつも、その時その時の光を
 捜し求める旅人なのかもしれない。
 解けゆく雪と共に、
 少し早い春の匂いが、空の高みから風に乗って
 ふっと私の前を過ぎ、
 もう一度空へと舞って行った。
 

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