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2012年10月

高知新聞連載10月24日(地球・美の幻風景)         ~室戸ジオパーク・虹の大地へ~

Photo              ~室戸ジオパーク・虹の大地へ~

休日の朝 突き抜けるような青空のもと

こんな日は 絶好のドライブコースを走りたくなる

季節の風に誘われるように私は室戸へと車を飛ばす

手結山を越えたあたりから右手に太平洋が開けてくる

私は少しアクセルをゆるめ 窓を全開にした

潮の香りがやさしく頬を撫でる なんて気持ちがいいのだろう!

まっすぐに海に向かって降り注ぐ太陽は

まるで宝石をちりばめたように海面に広がり

眩しいばかりの輝きを放っていた

心からの解放感―

2011年 世界ジオパークに認定されて

沈黙の巨岩たちは地質学者たちによって

少しずつ地球の歴史を語ってくれるようになった

我々も改めて存在を知り

地球の層を奏でる岩たちの声を聞くようになった

来る11月2日~5日の室戸ジオパーク全国大会開催の為に

撮影依頼を受け この日は 夜明け前 

時折小雨の降る中を私はまた 巨岩の立ち並ぶ浜辺へと出かけた

あいにく 水平線からの朝陽は望めなかったが

雲の切れ間から海を走り 光の道が大空を照らし始めた

ファインダーから目を外した瞬間 私はあっと声を上げた

雨を残した空が 大きな虹のアーチを見せてくれたのだ

室戸の撮影を始めて 2日目の事だった

この時を一瞬たりとも逃したくない気持ちと

ゆっくりと眺めて居たい気持ちが交互する中

夢中で構図を変えながらシャッターを押した

大地に大きなメッセージをくれた虹は

空と海と大地をひとつに結びつけていた

天の国と地の国が混ざり合うこの室戸の地に

秘められた多くの謎は 

空海をはじめ 多くの先人達を魅了して来たのだろう

まるで 荒波がそのまま姿を変えたような巨石の数々

我々の知られざる歴史を語る巨岩に囲まれながら

私は万物との強い縁を感じた

それは太古より日本人が持ち続けてきた

自然に対する畏敬の念が生み出したものかもしれない

ここは 生きとし生ける 

すべてのものの生命(いのち)を育む聖地なのだ

目に前の虹は 瞬く間に消えてしまった が 

私は 希望という名の未来への虹が

永遠に室戸に生きる人々の温かさと共に

大きな弧を描いているように感じた

                  

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高知新聞連載10月10日(地球・美の幻風景) ~画家の愛した風景~

Photo                   ~画家の愛した風景~

もしも モネやターナーが写真家だったら―

絵筆をカメラに持ち替えてどんな風景を描き撮っただろう

私は 風景を前にして 時折りそんな思いに駆られる時がある

私にとって 印象派の画家たちの影響は強い

パリを出て シードル街道を走り 

ジヴェルニー ルアーブル オンフルールへと

画家たちが生まれ育った風を感じたく 

ノルマンディ地方を旅したのはもう十数年も前のことになる

大西洋に面したセーヌ河口にある古い港町オンフルールは

印象派画家ウジェーヌ・ブーダンの故郷

彼の影響でセザンヌやモネたちもここを訪れ

のどかな港の風景にたたずんだと言う

印象派の画家たちを始め 

今も多くの芸術家たちが愛してやまない街

ここで画家たちは毎日毎日どれほど絵筆をふるったことだろう―

時間と共に 次から次へと表情を変える水面

揺れるヨットのマスト・・・

移りゆく光と共に 想(おも)は巡る

ノスタルジックな想いにふと 

我に返り「私もこの街の魔法にかかったのかな」と苦笑した

ヨーロッパでは最古と言われ 船大工が造った木造の教会が

歴史と共に呼吸し 

オンフルールの街に鮮やかな彩りを添えている

何故か熱いものがこみ上げて 

愛おしい気持ちで私はこの景色に向かい 一日中撮影をし続けた

光降る漁港

港から歩いて約10分ほどの所に

私の好きなエリックサティの生家があり 今は博物館になっている

2階の部屋の真ん中には まっ白いグランドピアノが置かれ

大きな窓では 木漏れ日が風と遊んでいた

私はこの風を聞くことができるだろうか

今にもサティのメロディが流れてきそうだ

そして私がサティの音に惹(ひ)かれる理由が

この空間には結集されていた

音楽家は 音で絵画を描き 

画家は絵筆で音を奏でたかったのかも知れない

サティは自分の故郷を後世このように語っていたという
 

「私が生まれたオンフルールは詩的なセーヌ川のほとりと

荒々しいイギリス海峡が一緒になる小さな街

そして この街の人々は皆礼儀正しく親切だ」と

今もなお 芸術家たちを魅了し続けるオンフルールの街

人はいつも それぞれの光を捜し求める旅人なのかも知れない

静かに閉じられた扉をもう一度振り返り 

印象派の画家たちが愛した風景を後にした

                                             

                                                       
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