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2012年7月

高知新聞連載7月18日(地球・美の幻風景)                     ~エーゲ海の宝石~

Photo            ~エーゲ海の宝石・ミコノス島~

エーゲ海に浮かぶ白い宝石ミコノス島

紀元前11世紀初めよりイオニア人が住みついたとされている

ギリシャ神話ではゼウスとギガースの戦いの地として知られ

島の名はアポロンの孫・ミコノスの名より取られたとされる

ある時期 私は自然と文明が共存しているような

ヨーロッパの情景に惹かれていた 

夏の北風(メルテア)を求めて

私はギリシャの国へ旅立つことにした

アテネの港ピレウスから 船に乗る事 

約5時間30分 ミコノス島に着く

見渡す限りの青い海と鮮やかな白い建物が迎えてくれる

港に着くと ホテルの案内人に混じって 

島のペット的存在 愛嬌のあるペリカンのペドロも迎えてくれた
 

石灰を塗った白い建物は 海に向かって 連なっている

まるで片時も休まずに太陽の光を浴びようとする生き物のようだ

一歩奥に入ると迷路のような街並 カラフルな看板など

どれもセンスがよく 新鮮で目を奪われる

くねくねと入り組んだ道は 私の好奇心を掻き立て

気持ちが昂揚していく

時折すれ違うロバの姿もまた のどかな島時間を感じさせてくれた

白い塀には ブーゲンビリアの花が降り注ぐように咲き

キャンバスに描かれた匂い立つ絵画のようだ

また夜になれば 

テンポのいいリズムがあちらこちらから聞こえて来る

そう ここは眠らない島としても有名だ

私は ふらっと立ち寄ったショップで

一枚のポストカードを手に取った

それは 私がイメージしたミコノス島の場所だった

ポストカードを手に

その場所を何度も何度も探したが 見つからない

夕暮れの時間が迫ってきて

ついに自分で探すのを諦めた私は

タクシーに乗ることにした 5分くらい走っただろうか

タクシーはあっけなくその場所に連れて行ってくれた

私は急いで撮影の準備に入った 

しっかりと三脚を立てて広角レンズをつけた

一息つくと 何だか風がやさしかった 

改めて夏の北風(メルテア)を感じたのだ

メルテアを受けてクルクルと回る風車(カト・ミリ)を眺めながら

ひとつの記憶が蘇ってきた それは 私が子どもの頃

よく遊んでいた一枚のパズルの絵だった

その風景は ここミコノス島と一致する

確かにそうだ そして そのパズルの箱には 「時のない海」

とだけ書かれてあったことも━ 

記憶に導かれた風景だったのだろうか

夕陽に輝くミコノス島は たとえようもないくらいに美しく

なつかしい気持ちにさせてくれた

                        禁無断複写・複製・転写

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高知新聞連載7月4日(地球・美の幻風景)~熊野古道~

Photo                    ~熊野古道~

道を歩く一。

ただこれだけのことで 

これほどまでに深い祈りを感じることがあっただろうか

熊野古道に入ると 自分自身の中で何かがひとずつ

脱ぎ捨てられていくように 体の中から軽くなって行く

前回掲載した 「那智の滝」へ向かう途中

たどり着くまでに歩んだ世界遺産でもある

熊野古道を今回は紹介しようと思う

霊気が漂う熊野三山 世界遺産の中でも 

道そのものが登録されること自体は大変まれだという

それだけに ここ熊野古道は世界の中でも特別な存在と言える

熊野古道は 紀伊半島南部にあたる熊野の地と

伊勢や大阪・和歌山 高野および吉野とを結ぶ

古い街道の総称である

紀伊山地の霊場と参詣道 

再生の地と信仰されてきた熊野へ至る祈りの道として

地域の中で今も生き続けている

古くから神々の住む聖地として崇(あが)められており

厳しい道を乗り越えて 

大自然の中にある再生の地・熊野へ詣でることで

来世の幸せを神々に託すという信仰が生まれたと聞く

熊野の地が「浄土の地」として 僧たちが庶民に

「長く険しい熊野への道のりを越えていく」

熊野信仰の悟りを開き 熊野に行けば救われると

受け入れられるようになったからである

もちろん それは 熊野の神々が 

懐の深い神であったことが大きく影響しているのかもしれない

身分や性別を問わず 誰でも受け入れてくれる

自然の中に存在する自然崇拝の神だからだろう

折り重なるような石畳の道が続く熊野古道を 

私は代表的な道 大門坂から撮影に入った

かつて坂の入り口に大門があり 

通行税を徴収していたことが名称の由来とされた

その日はどんよりとした天候で 撮影には向かない条件だった

しかし 森はそれ以上に霊気を漂わせ 

私を深い杉木立の中へと どんどん導いていく

苔生した色の石畳の道を進むと 目の前の両側に

まるで門柱のようにそびえ立つ 樹齢数百年の夫婦杉があった

ここで何百年もの間 

たくさんの人を見守ってきた 同じそのまなざしが

私にも向けられているかと思うと 

胸の高鳴りを抑えることができなかった       

根元から空を見上げると 

雲の隙間に突き刺さるように枝は延びていた

天からの恵みが大地に広がり光のように道案内をしてくれる

物語は時代絵巻のように展開し 進むにつれて

五感では感じる事のできない 

見失いかけたもうひとつの感性に

しきりに呼びかけている自分を発見した
 

熊野古道の終着駅は 自分自身の心の中なのかもしれない

私は深い呼吸と共に更なる一歩を踏み出した

                    

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