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2012年4月

高知新聞連載4月25日  (地球・美の幻風景)              ~美の中を歩く~

S                                          ~美の中を歩く~
 

空を舞うタンポポの綿ぼうしが

太陽の光に吸い込まれるかのように

上へ上へと旅立って行く

その先には 四国の屋根を走る高知県が誇る天空を走る道がある

林道瓶ケ森線 日本でも指折りの絶景の道だ

視界はどんどんと広がり 景色は深く高くなる

辺りを見回すと怖いくらいだ

先を見上げると空へと続かんばかりの勢いである

寒風山トンネルから車で登り詰める事約40分

途中 手掘りのトンネルを抜ける

標高1000m以上の高い山地の岩場崖地に群生し

ツツジでは一番の早咲き

4月下旬~5月上旬に開花するアケボノツツジが在る

ツツジの中でも大きな花をつけ 木も高く育つ

その柔らかく淡い色合いのせいか

大きな花にも拘らず可憐でやさしく見える

全体に丸みがあり 透明感のあるグラデーションを施した花びらは

品がよく春の岩山に現れる仙女のようだ

山々を薄墨色の春の色彩がゆっくりと絵の具で

色を足していくように染めてゆく

どこで車を止めて見ても 目に入る光景にレンズを向けたくなる

あちらこちらでアケボノツツジが 花びらをかわいく震わせている

ゆっくりしてはいられない

目的の場所を目指して私は車を急がせた

途中幾度となく 車を止めたい衝動にかられたが

そのまま先へ進んだ

それには訳がある 私は撮影する時 メインの被写体よりも

むしろその前後にこだわりを持つ

この場所は ある時間帯に

バックの山がとても美しいブルーグリーンに染まり

アケボノツツジの花びらがより引き立ち 息をのむほどだ

まるで天空の庭だ

木々はピンクの優しい花に包まれている

なんとも言えない香りが遠い記憶へと連れて行ってくれる

しばし憧れの情でうっとりと眺める

呼び覚まされた記憶ひとつひとつがこの花のように語りかけ

私の心を彩っていく

少しずつ暮れはじめた春の日は

新緑の初々しい匂いでむせかえる

バサバサッと鳥の飛び立つ音がしたかと思うと

鳴き声と共に去ってゆく

林の中の足場は悪く

平らな所を探し目線を花に合わせて撮影に入る

しかし風のいたずらか 花びらが止まらない

辛抱強く 一瞬のチャンスを待つ

柔らかい靄のベールで覆われた中

アケボノツツジが浮き彫りになり

幽玄な世界を醸し出していた

ふと見上げると 空は深く静かなブルーに染められていく

一瞬 私は空に川を見た その流れの中に曙色が映しこまれ

夢見るような光景だった

「人は花の記憶の中で満たされていく」

       撮影を終え

 もう一度 私は自分をふりかえるように美の中を歩き続けた

                                                                                 

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高知新聞連載4月11日水曜ミュージアム                      (地球・美の幻風景)~呼吸する大地~

Photo                   ~呼吸する大地~

米アリゾナ州セドナから車を走らせて北へ約4時間

地上で最も美しい場所と称されている「ザ・ウェーブ」がある

近年 テレビなどでも紹介され 世界一の絶景!

神が創造した芸術とも言われる 秘境中の秘境である

2003年にカメラマンによって発見され 

写真家の聖地とも言われている

はじめてザ・ウェーブの写真を見たのは 

近郊のレイクパウエルのホテルのフロントにかけてあった

一枚の写真だった 詳しく聞いてみると 岩が砂質で非常にもろく 

保護区のために入場者数が制限されており 

インターネット予約20名と 

前の日の抽選で10名 一日計30名だけが 

この地を訪れる権利を得ることができると言う

全世界から 訪れたいという人が後を立たない中

私は幸運にもその地に立つことができたのである

駐車場から徒歩で片路約2時間 

重い機材と4ℓの水を抱えて出発する

日本では想像できないくらいの乾燥地帯では 水は命に関わる

目印が無い砂漠のような山をあてどもなく歩いて

目的地にやっとのことでたどり着く

あたり一面に広がった縞状のウェーブが

美しい両手を広げて向かえてくれた

秘境の中の神秘 私は言葉を失った

訪れることができた者だけが 見ることのできる光景

そこはまさに地球誕生46億年の奇跡

風と水で施された大地の彫刻 

一億九千万年前 砂岩が造形した巨大砂漠の化石

まるで果てしない4次元の世界のようだ

私は無重力空間の中に放り出されたかのように

茫然と立ちすくんでしまった 

細胞の内部に仕掛けられた時は 

驚くほど正確に太古の記憶を刻みはじめた

勇気を持って踏み出した異次元の世界への一歩

のみ込まれはしないかという恐怖に近い感覚と

闘いながらシャッターを切り始めると 

自分と自分の中の生命の記憶とが交信し始めた

大自然をファインダーに写し込む時 静かに 

自分の存在を通して奇跡を見せてくれる

光が強ければ強いほどその影は深く鋭い

傾きかけた太陽は ウェーブをより立体的な造形物に変えていく

まるで生き物のように・・・

そこに吹く風や眩い光 すべての魂が何かを語りかけてくる

先人たちも同じ声を聞いたのかと思うと

懐かしさと感動の中で私は暗くなるまで大地の呼吸を感じていた

                             禁無断複写・複製・転写

写真集「セドナ奇跡の大地へ」http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BB%E3%83%89%E3%83%8A-%E6%A1%90%E9%87%8E-%E4%BC%B4%E7%A7%8B-%E5%86%99%E7%9C%9F-NA/dp/4062155397/ref=sr_1_7?ie=UTF8&qid=1334116943&sr=8-7

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