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2012年1月

高知新聞連載「水曜ミュージアム」1月18日          地球・美の幻風景 ~紅景詩~

Photo_2                     ~紅景詩~

写真を始めて間もない頃 20年ほど前になるだろうか

まだ見ぬ冬の風景を探しながら 

私は北へ北へと車を走らせていた

雪はすっかり冬支度を終えた木の枝に ふんわりと舞い降りてきて

その年の新しい情景を私に教えてくれた

峠を幾つ越えただろう 

ぼんやりと全体の景色が見えてきたその先に

一本の老木があった

遠くから 何か私に呼びかけているようだ ここは何処だろう

湿地帯を覆う枯れ野にも 透きとおるような雪の結晶が施され

地上に銀河を描いている  美しい所だ

場所も地名もよくわからないまま 私は車を止め 

撮影の準備に入った

凍てつくような寒さに 幾度となく息を手に吹きかけた

白い息は冷たい空気の中に広がり 消えてゆく

うっすらと霧のベールに包まれた景色は 

日の出と共に 辺りを紅色に染めはじめた

立ち枯れた木々の間から 光がオーロラのように舞う

レンズを覗き ようやくシャッターを切ろうとしたその瞬間

私の眼に一羽の鳥が飛び込んできた

まるで挨拶にでも来てくれたのか 木の周りを旋回したあと 

枝の先にちょんと停まり 朝一番の太陽に向かってさえずり始めた

なんと言う事だろう!

私はもう無我夢中だった 思いもかけない訪問者が朝の光景を

一瞬にして永遠の物語にしてくれたのだ

この時の奇跡の一枚が 

私を写真家としての歩む道を 導いてくれたのかもしれない

後に 高知市長賞も頂いた作品である

作品のサブタイトルには

「その凛とした小さなくちばしが語る大きな宇宙」

と言う長い言葉を添えた

時が流れ 昨年10月 私は写真家の故星野道夫氏の盟友の

ボブ・サム氏(クリンギッド族の語り部)にお会いする機会があった

彼は ワタリガラスがいかにこの世に光を与え

すべてのものに魂をもたらしたかという

部族の大切な神話を話してくれた 

また 翼を持つ鳥は世界の神話の中でも 

太陽の化身や 太陽の使者として登場する

鳥の話を聞いた時 私の中でシンクロニシティ

「意味のある偶然の一致」が起こり20年前の光景が蘇った

多くの自然風景との出会いの中で 

自分の小ささを感じれば感じるほど 

我々が包まれている地球の大きさを思い知らされる

銀河系の中にぽっかりと浮かんだ地球は 

周りの星たちの見えない力によって

ひときわ美しい姿を保っているのかもしれない

果てしなく広がる久遠の音色は 私の内なる宇宙と響き合う

新年を迎え 

私はもう一度 初心に帰ろうと今回この作品を選択した

  地球の美の幻風景を 

    今の私達に与えられた約束の地として 

       後世に伝えていければと 静かに思った

                       

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