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2011年9月

高知新聞連載9月21日~美の迷宮・ヴェネツィア~

Photo

              ~美の迷宮・ヴェネツィア~

美の創造主たちが饗宴する

イタリア北東部にある水の都ヴェネツィア

人々は燦々と降り注ぐ太陽のように陽気で明るい

テンポのいいイタリア語は音楽の様に調子よく

今にも歌いだしそうだ

私が初めてヴェネツィアを見たのは 飛行機の中だった

上空から見た姿はその名の通り「アドリア海の女王」そのものだった

優美で華麗 甘美な香りが漂う

ヴェネツィア本島は大きな魚のような形をして

沢山の島が集まって出来ている その真ん中を約3㎞に及び

大運河が島を二分するかのように湾曲して流れている

この島には車が入れず主な交通手段は水上交通である

水上タクシー、水上バス 観光用のゴンドラなどが運河を行き来する

世界中からの観光客で溢れかえっている街路

どれだけの人々の想い出を紡いでいった事だろう!

私の旅の想い出は

カフェで口髭のマスターが入れてくれたこだわりコーヒーである

そういえば ここヴェネツィアは カフェの発生の地でもあると聞く

じっくりと撮影をはじめたサンマルコ大聖堂の真夜中

観光客と人々の話し声で賑わっていた広場とは

別の場所へ来たようだ

昼間の喧騒をのがれ 沈黙の教会の姿を目のあたりにした私は

半分水没した大聖堂を見て 

ヴェネツィアのロマン溢れる表の顔と歴史上の悲劇の裏の顔を

一度に垣間見た気がした

辺りは真っ暗で ぴちゃぴちゃと水音が靴の下で鳴る

目の前に現れたその姿は

古来ヴェネツィアの歴史を胸に封じ込めながら

島を守り続けている聖人なのかもしれない

レンズのこちらから 語りかけるにはあまりにも崇高で 荘厳

周りをお堀に守られている日本の城にも姿が重なった

時間が経つにつれ 水量はまし 

闇からこぼれてくるわずかな光に反射して 輝きを増す

海水が流れ込み海流がほのかな潮の香りを運ぶ

聖堂の中は何年もの渡る人々の祈りの言葉が刻み込まれ

聖人たちの気配が息づいている

この大聖堂を建築する為に 

多くの知恵と労力が使われているという

干潟に建物を建てるため大量の丸太の杭が打たれているのだ

そのため「ヴェネツィアをさかさまにすると 大きな森ができる」

ともいわれている

運河の底の森に支えられたヴェネツィア共和国

島は潮の満ち引きによって水で満たされそして引いてゆく

今も尚輝き続けるヴェネツィア

色鮮やかなヴェネティアガラスのように立ち並ぶ家々

人々はロマンと情熱を燃やし、愛を語る

世界中のどこよりも真紅の薔薇が似合う場所

    その姿は1987年 世界文化遺産に登録されている

          

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高知新聞連載9月7日(地球・美の幻風景)~月の庭~

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                   ~月の庭~

ぼんやりと海の上に浮かぶ幽玄な異次元の世界・・・。

望遠レンズを覗きながら捉えた一枚の写真

被写体を求め 沖へ沖へとシャッターを切り続けた

今となっては余りにも夢中だったせいか この場所が定かではない

あれはレンズの向こうにだけ現れた

その時だけの夢幻の世界だったのだろうか?

闇を恐れる古代人にとって月の明るい夜は

かけがえのない夜だったという

月の出ない夜 

人々は身を寄せ合って闇を払いのけるかのように騒ぎ

夜が明けるのを待った

それだけに満月の日は待ち望まれた時であったのだろう

月の満ち欠けによって暦を数え農業を営んでいた人々は

月を農耕の神様として崇め 秋の収穫の時には

稲穂や芋などを捧げ感謝したという

月の光に誘われて神々が宙から舞い降り

波の音を奏でながら宴を開き 

酒を酌み交わしていたのかもしれない

この地球という庭に訪れた 満月の夜だけの夢一夜

今年も中秋の名月の日がやってくる ススキやお団子をお供えし

月を愛でる風習は残るものの実際にゆっくりと空を見上げて

悠久の時を想う人は少なくなった

だが ビルの間から垣間見る月光も海に銀波を描く光のしずくも

優しく人々に降り注ぐ

満月の光は太陽の光を月面で反射して46万5千分の1の光となり

私達に届いていると聞く

実に 太陽と月のコラボレーションと言える現象である

古事記によるとイザナギノミコトの左目からは太陽の神

天照大御神(アマテラスオオミカミ)が

右目からは月読命(ツキヨミノミコト)が誕生したと伝えられている

それは 陰と陽が一つになる事でよりバランスが保たれ

自然が新たな自然美を創る情景だ

そんな想いにふけながら静かに月光をまとい

月の綺麗な夜は 愉しみたいと思う

わが町高知には日本に誇る月の名所がある

中秋の名月の夜 毎年桂浜では観月の宴が開かれる

松明の明かりの下 詩吟を聞きながらの月見はまた格別だ
 

王朝の時代 杯に月を映し 歌を詠み

池に舟を浮かべ水に映る月を拝する 

そんな遊びも優雅な喜びであった

私達日本人の中に脈々と流れる雅のDNAは

絶やすことなく受け継がれていってほしいと願う

奇蹟の星が奇跡のままに宇宙との交信を忘れることなく

               美しいままでいてほしい

                           禁無断複写・複製・転写 

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