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2011年7月

高知新聞連載7月27日(地球・美の幻風景) 大海へ

Photo         地球・美の幻風景     桐野伴秋の世界    (大海へ)          

初めての海外旅行はあまりにも突然やってきた

まだ 二十歳代の頃

当時流行りのディスコのパーティに誘われて

気乗りしないまま 出掛けることにした そこでは

優勝者にはグアム島旅行付き というジャンケン大会があり

参加した私は

何と帰るときにはその切符を手に入れていたのである

当時の私は 人見知りで人の中に入って行くのが苦手

人間関係ではいつも失敗を繰り返していた

そんな日常からの逃避もあり

私はすぐにグアム島行きを決心した

だが 決心はしたものの言葉も通じない国へ行って

どうやって過ごそうか不安と少しの期待が入り混じる旅だった

しかしタラップを降りた瞬間

突き刺すような日差しを受けたのも拘らず

日本では味わったことの無いカラッとした空気感に包まれ

心が浮き立っていくのを感じた

浜を歩くと見知らぬ人が皆、笑顔で声をかけてくれる

私もつられて笑顔で「ハロー」と返す

その時私は自分自身が驚くような解放感を味わい

日に日に笑顔の時間は増えて行った それ以来

私は南の島の虜になり 次に目指したのがモルディブだった

モルディブはインド洋に囲まれ 約1200の島からなる国

その美しい姿から「真珠の首飾り」とも呼ばれている

「モルディブ」という名前は古代インドの言葉サンスクリット語の

「Malodheep」から由来するとも言われている

少し早起きをして 純白の砂浜を散策すると不思議なことに

故郷高知と以外な共通点があることに気が付く

このあたりは漁業が生活の中心で

特にマグロや カツオ漁がさかんだ

それだけではない

作り方は少々違うのだが鰹節を作っているのである

その頃 東京に住んでいた私は高知を想い

この不思議な繋がりを懐かしく大切に思った

島国には島独自の風習が根付いている

人々は海に囲まれた島で

先祖から伝えられてきた自然との共生や

生きぬく術を継承している

地球上にまだこんな所があったのかと 美しさに魅了されながらも

地球温暖化による破壊的な影響を受ける国のひとつだと知ると

サンゴ礁でできたこの島がガラス細工のように

儚げな地球の宝石箱の様に愛おしく感じる

無邪気な可愛らしい声に振り向くと

バカンスに来たイタリア人のファミリーだった

恐る恐る 大海への第一歩を踏み出し

子供は海にまさに挑もうとしていた

波と風に向かい 一瞬 子供の身体が宙へ

引き揚げられたのではないかと驚いた

その姿はあまりにも微笑ましく はかなげだが たくましく

私は勇気と元気を貰った

気が付くと私は始終笑顔だった

別れ際に グラッチェ(ありがとう)と

はにかみながら言った彼の顔は少し大人びて見えた

ゆっくり珠玉の時間が海の向こうへ流れて行く

      この子供達の未来へも変わりなく

           美しい姿のままでいてほしい・・・と願う

                              禁無断複写・複製・転写

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高知新聞連載7月13日(地球・美の幻風景) 宇宙の扉

Photo       

                   ~宇宙(そら)の扉~

いつの頃からか、渚の魔力に取りつかれ

以来、私は時間を見つけては海に出掛けていた

この日も午前2時頃から車を走らせ、お気に入りの渚に向かった

ここは、四万十市の平野海岸

数日前から降り続いた雨で、山からの水が流れ込み

砂浜には新たな川が描かれていた

早速、撮影の準備に入る。まだ真っ暗な時刻

普段なら懐中電灯を照らすのだが、幸い満月だ

私はその月あかりに助けられ、三脚を立てた

あまりにも静寂で、微動だにしない時のはざま

去りゆく時と、始まろうとする時が一瞬交わり

膨らんだ水面に太古からの記憶が書き記されてゆく

わずかな光に、グラデーションを施したように

空から海へと辺りの色は時間と共に彩りを変えていく

化石のような、白く浮かび上がった細い川・・・        

それは 地球と宇宙を結ぶ まるで

生命(いのち)(エネルギー)の循環を促す

「生命(いのち)への道」なのか

そして人類が生まれる前から存在し

私達はこの「道」によって生かされ続けていたのではないだろうか

一滴のしずくが大河を超え、果てには宇宙へと舞い上がる

この未知なる大自然に身を委ねたとき私は今

この世界の創造主の作品の中で

生きている事を改めて実感したのだった

なんて不思議な時間なのだろう

撮影を始めると、私はゆっくりと羊水という小宇宙に向かい

胎内に入ってゆくような感覚に捉われた

そこには始まりもなく、終わりもない

カメラに収めたこの一枚は一瞬に描き撮った

永遠の時間なのかもしれない

凛とした潮風の中、撮影を終え

ひんやりとした砂浜に素足を埋めた

先日 私が敬愛し 尊敬する

人生の師とも呼ばせて頂いていた

金高堂書店社長・吉村浩二氏がお亡くなりになった

多くの人に愛され

頼られていた氏の死に心痛める人は数えきれないであろう

まだまだ 教えを乞いたいことも多く

灯台を失った小舟のような喪失感を

何処へ持っていけばいいのかと悲しみは深い

生前、この写真の前に立ち

にこやかにスピーチをして下さったのは

つい 3か月前のことだ

開かれた宇宙(そら)の扉から

吸い込まれるように氏は旅立ってしまった

しかし 氏の魂は生命(いのち)の循環の中で

きっと大地を潤す一滴となり

世代を超えて我々の心にいつまでも語り継がれるに違いない

                 この美しい地球と共に・・・

                                    

                               禁無断複写・複製・転写 

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